伏見の中心で日本酒を楽しむ!
「伏見の清酒まつり in 大手筋商店街 2025」の様子をレポート
2025年11月15日(土)、京都・伏見の大手筋商店街にて「伏見の清酒まつり in 大手筋商店街 2025」が開催された。伏見の酒蔵が集結し、地元でそれぞれの銘酒を楽しめる機会として年々その認知度を高めている。本記事では一部の様子をレポートする。
伏見の町が日本酒一色で染まった一日

豊臣秀吉が晩年の居城として1592年に建築を開始した伏見城。その大手門へと通じる主要道として整備されたのが現在の大手筋通りである。大正時代に商店街として生まれ変わり、以降も時代に合わせた姿を見せ続けてきた。現在も地元住民の生活になくてはならない店舗が並び、日々多くの人で賑わっている。
大手筋商店街の周辺には京都・伏見の酒蔵が多く立ち並んでおり、それぞれの蔵へは徒歩で訪れることができる。伏見の日本酒を楽しむ上で、文字通り避けては通れないメインストリートだ。
2025年11月15日(土)に行われた「伏見の清酒まつり in 大手筋商店街 2025」では、歴史ある伏見の酒蔵15蔵が参加。約400m続く商店街は、第一部が始まる13時30分になると大勢の来場者で盛り上がった。
参加チケットは3部制で、1日を通して4,200名以上の来場者が伝統ある伏見の日本酒を堪能した。
伏見の15酒蔵が新酒などの日本酒を提供

大手筋商店街は東端に近鉄電車の「伏見御陵前駅」、京阪電車の「伏見桃山」駅が隣接している。駅を降りると目の前に大手筋商店街が広がる。
商店街の中心に各酒蔵のブース、両サイドには地元飲食店を中心としたフードコーナーが並び、参加者は日本酒を飲むためのイベントオリジナルおちょこ、そして10枚綴りとなったお酒券を片手に各蔵の日本酒を楽しめる。
秋も深まり、酒造シーズンに突入した11月中旬。
各蔵では新酒の提供も目立ち、この時期しか味わえないフレッシュな味わいをレポート。
A キンシ正宗(1781年創業)
出品酒:(燗)金鵄正宗 純米吟醸磨き60/銀閣 荒武者/金鵄正宗 純米吟醸 山田錦/松屋久兵衛

創業者の名前を冠した「松屋久兵衛」は、兵庫県産山田錦を35%まで精米した贅沢な1本。上品な吟醸香、雑味のないきれいな味わいが楽しめる。
B 増田德兵衛商店(1675年創業)
出品酒:月の桂 抱腹絶倒/月の桂 柳 純米吟醸酒/月の桂 大吟醸 にごり酒

無農薬で栽培した京都伏見産の酒造好適米「祝」を使用した大吟醸にごり酒。にごり酒ならではのコクと旨味、さっぱりした後味が楽しめる。
C 月桂冠(1637年創業)
出品酒:(燗)特撰/アルゴ 日本酒5.0/アルゴ スパークリング日本酒5.0/【新酒】新米新酒 純米大吟醸 生酒/鳳麟 純米吟醸/鳳麟 純米大吟醸

革新的な技術をベースに新しい日本酒に挑戦し続ける月桂冠。2025年は昨年9月にリリースした「アルゴ 日本酒5.0」のスパークリングを発売。発泡による爽快感、キレの良さが合わさっており、日本酒の裾野を一層広げることが期待される。
D 北川本家(1657年創業)
出品酒:【新酒】富翁 しぼりたて無濾過生原酒/【新酒】富翁 純米大吟醸ささにごり 生原酒/富翁 大吟醸 山田錦 入賞酒

上槽から数日で発売される無濾過生原酒。どっしりとした濃醇な味わいであり、まさに「しぼりたて」というフレッシュ感が楽しめる。味わいの濃いおつまみにも負けないパワフルな一本だ。
E 都鶴酒造(1970年創業)
出品酒:都鶴 純米吟醸 生酒/都鶴 純米吟醸 ひやおろし/都鶴 純米大吟醸 無濾過原酒

170年以上の歴史を持つ「都鶴」銘柄。これまで多くの酒蔵によって引き継がれ、現在にその名を残す。京都・伏見らしい上品で奥ゆかしい香味が楽しめる。
F 宝酒造(1842年創業)
出品酒:松竹梅「昴」〈生貯蔵酒〉/特選松竹梅 〈純米大吟醸〉/特選松竹梅 〈大吟醸〉 磨き三割九分

独自酵母によって高い香りを表現している「松竹梅『昴』〈生貯蔵酒〉」。生貯蔵ならではのフレッシュ感、清涼感が楽しめる銘柄だ。
G 豊澤本店(1800年代創業)
出品酒:豊祝 しぼりたて生原酒/豊祝 吟醸/豊祝 純米大吟醸 祝/豊祝 純米大吟醸 山田錦

「豊祝 しぼりたて生原酒」は料理に寄り添い、素材の味わいを引き立てるスッキリした味わい。
H 松本酒造(1791年創業)
出品酒:桃の滴 純米吟醸/NEWKYOTO 白緑(京都限定)/桃の滴 純米大吟醸

2022年に京都・伏見へ移転してから100周年を迎えたことをきっかけにリリースされた「NEW KYOTO.JP」シリーズの「白緑(びゃくろく)」。洋梨、リンゴのような清涼感のある香り、アルコール度数は14度と軽快な味わいが楽しめる。
I 京姫酒造(1918年創業)
出品酒:大吟醸 匠/純米大吟醸 匠/純米大吟醸 紫/純米大吟醸 紫「祝」

山田錦を全量使用した「山田錦 大吟醸 匠」。ワイングラスアワード、燗酒アワードで金賞を受賞するなど、幅広い味わいが楽しめる大吟醸に仕上がっている。
J 松山酒造(1923年創業)
出品酒:【新酒】十石 祝 純米吟醸 無濾過原酒 一火 冷 or 燗/1年低温寝かせ純米吟醸のどれか/十石 祝 純米大吟醸 京都限定無濾過生原酒/非売品 今日のための十石の樽酒 純米吟醸/【新酒】非売品 十石 純米吟醸おりがらみ 斗瓶取り

新酒だけではなく、本イベント限定酒など幅広い銘柄を展開していた松山酒造。2023年に登場した「十石」ブランドは年々注目度を増しており、今後のさらなる発展が期待されている。
K 招徳酒造(1645年創業)
出品酒:【新酒】純米吟醸冬の酒〜しぼりたて〜/純米吟醸秋の酒〜ひやおろし原酒〜/純米大吟醸祝40/純米大吟醸山田錦35

「純米吟醸冬の酒〜しぼりたて〜」は新酒ならではのガス感が楽しめる。酒造シーズンの時期しか楽しめない貴重な味わいだ。
L 齊藤酒造(1895年創業)
出品酒:【新酒】英勲 純米しぼりたて 生原酒/英勲 秋上り 純米酒/英勲 130周年記念 純米大吟醸 うすにごり/一吟 純米大吟醸 中採り原酒

2025年に創業130周年を迎えた齊藤酒造では、「英勲 130周年記念 純米大吟醸 うすにごり」が提供された。
M 玉乃光酒造(1673年創業)
出品酒:【新酒】純米大吟醸 しぼりたて 原酒/にごりスパークリング 京の光/有機 純米吟醸 GREEN雄町/純米大吟醸 短稈渡船

今年の10月、厳しい審査をクリアしなければならない「awa酒」に認定された玉乃光。2024年にリリースされた同蔵初となるスパークリング日本酒「にごりスパークリング 京の光」では、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵によるきめ細やかな泡が楽しめる。
N 山本本家(1677年創業)
出品酒:【新酒】無濾過生原酒 たれ口/(燗)神聖 超辛口 特別純米原酒 京の輝き/祝 純米大吟醸 三割五分/特上山田錦純米大吟醸原酒 三割五分/特上山田錦純米大吟醸原酒 二割五分

上槽から手を加えることなく、そのままの味わいをボトルに詰める無濾過生原酒。しっかりした旨味とフレッシュ感はこの時期にしか楽しめない味わいだ。
O 黄桜(1925年創業)
出品酒:純米スパークリング ピアノ/なからぎ 純米吟醸/(燗)特選 純米吟醸 黄桜/【新酒】新米新酒 大吟醸ヌーヴォー

アルコール度数5%という軽快さ、そしてお米の甘さを引き出した味わいによって新しい日本酒ファンを生み出している「純米スパークリング ピアノ」。日本酒の多様性、そして造りの技術の奥深さが感じられる銘柄となっている。
会場内では地元の飲食店を中心としたフードも充実。日本酒に合う料理を中心に、各店の特色を活かしたおつまみが提供された。
「GI京都」から世界へ伏見の酒をアピール

伏見酒造組合理事長 北川本家の北川幸宏さんに、この一年の所感と今後の展望を聞いた。
「昨年、組合理事長に就任しましたが、通常業務に加えて万博とGI取得という大きなイベントがあった1年でした。
『GI京都』は海外へ展開することを見据え、京都の日本酒ブランドが悪用・乱用されないことを目的にしています。今後は『伏見』や『丹後』といった、京都の中のエリア区分で取得することを検討しています。
また、今年は原料米価格の高騰もありました。酒米は食用米より1年遅れて価格が変動します。現在の状況を考えると、もう一度値上げの波が来るため、日本酒全体の価格上昇は避けられないと思います。その他アルコール飲料が大きく値上げしない中、日本酒だけが上がることに対してどこまで受け入れてもらえるかが問題です。日本酒が日常から離れることのないよう、こうしたイベントを通して日本酒との接点を作っていくことが大切になっていきますね」
地理的表示である「GI(Geographical Indication)」は地域ならではの要因で育まれてきた品質、社会的評価といった特製を有する産品の名称であり、その生産地や特製、そして原料や生産方法といった基準のもとに登録し、保護することを目的にしている。
国内では2025年11月現在、日本酒・焼酎・ワインを含めた34のGIが認定されており、その数は年々増加傾向にある。「GI京都」は2025年10月1日付で、清酒区分における酒類のGIに登録された。
それぞれの地域で条件が異なっており、GI京都の条件は「京都府内で採水した水のみを用いたものであること」や「京都府内で製造されたもの」「貯蔵する場合は京都府内で行う」といったものが挙げられている。
原料米の価格高騰に伴い、日本酒自体の価格も上昇しつつある。しかし、酒造りに伴う手間や品質を考慮すればその価値は十分に正当化される。イベントを通してこうした価値を伝え、日常的に日本酒に触れてもらう機会を増やしていくことが、業界全体の活性化につながるだろう。
2026年3月14日には伏見の各蔵が一斉に蔵開きを行う「伏見 酒フェス〜FUSHIMI SAKE FES.〜2026」の開催が予定されている。長年培ってきた歴史と共に、新たな伏見の日本酒を生み出す各蔵の動向を引き続き追っていきたい。
ライター:新井勇貴
酒の文化と物語を伝えるフリーライター。大学卒業後に京都市内の酒屋へ就職し、食品メーカーでの営業を経て独立。(Webサイト)
保有資格:J.S.A. SAKE DIPLOMA・ワインエキスパート/SSI 酒匠・日本酒学講師





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