イベントレポート

パソナグループの古酒ブランド「古昔の美酒」発の新商品『GOLD』『梅響』発表会兼試飲会レポート

パソナグループの社内ベンチャー[株式会社匠創生]が取り組む熟成古酒ブランド「古昔の美酒」が、女性・若年層に向けたブランド古酒の新商品『GOLD』と『梅響』を3月3日にリリース。その発表会兼試飲会をレポートする。

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株式会社パソナグループが、2020年に社内ベンチャーとして立ち上げた[株式会社匠創生]が展開する古酒専門ブランド「古昔(いにしえ)の美酒」。
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され注目を集める中、“熟成”という価値を創出し、酒文化を未来に繋げていくための取り組みだ。
その「古昔の美酒」より、新たに女性・若年層に向けた商品が3月3日にリリース。それに合わせてメディア向けの発表会と試飲会が行われ、[匠創生]代表取締役社長の安村亮彦さん(以下、安村さん)と、鳥取県[梅津酒造有限会社]会長・梅津雅典さん(以下、梅津さん)が登壇した。

熟成の価値を創出し、伝統産業を持続可能にする「古昔の美酒」

人材派遣会社をはじめとした多数企業を傘下に持つパソナグループで、社内ベンチャーとして2017年に設立したのが[株式会社匠創生]。2020年に古酒専門ブランド「古昔(いにしえ)の美酒」が立ち上げられた。

日本酒業界は1970年代以降、洋酒の流入やライフスタイルの変化によって、消費量が減り続けている。過去50年ほどで清酒の酒類製造免許場、いわゆる日本酒蔵は約3500から1500までに減少。
さらにここ数年は、若者のアルコール離れも加速しており、業界として厳しい現状である。世界のアルコール産業の市場規模と比較しても、ワインやウイスキーといった洋酒とは大きく差をつけられている。
洋酒と日本酒の市場が大きく異なる理由のひとつには、「洋酒は『高級酒』の市場が拡大している」という点が大きい。そしてその高級酒のほとんどはヴィンテージ、つまり熟成酒なのである。

実は日本酒の世界でも宮廷で熟成を楽しむ文化が存在し、宮廷では飛鳥時代から行事の際に「九年酒」という9年間熟成された酒が用いられてきた。現代でも皇室では婚礼の儀の際に「九年酒」(宮廷の酒造免許は明治時代に廃止されているため、現代の「九年酒」は当時とは異なる)が登場する。
「その歴史があるからこそ、日本酒や焼酎のヴィンテージが世界で適正に評価されるマーケットを作っていきたい」と安村さんは記者会見の際に語った。

株式会社匠創生・代表取締役社長の安村亮彦さん

2019年より、全国1500もの酒蔵を自ら巡って古酒保有調査を行った安村さん。翌2020年には33の酒蔵とともに、10年以上の熟成期間を基準とした長期熟成古酒ブランド「古昔の美酒」を立ち上げ、本社のある兵庫県淡路島に旗艦店である「古酒の舎」を開設し、ショップとバーラウンジを併設させている。
「古昔の美酒」ブランドでは、単一の銘柄では生み出せない味わいのプレミアムブレンド古酒を販売し、“熟成”の価値をPRするため、チョコレートやフレンチとのペアリングイベントや、インバウンド向けのプロモーションなどを積極的に開催してきた。世界各国で開催されるコンペティションにも出品、受賞を重ね、フランスを皮切りにグローバル展開にも着手している。

一方で、熟成期間が長くなるほど貯蔵スペースや保管コストが酒蔵を圧迫してしまうのが古酒。負荷を軽減し経営課題を解決すべく、2023年には兵庫県加古川市に共同酒置場「日本の古酒蔵」を開設。現在は58のパートナー酒蔵の155銘柄を常温タンク貯蔵しているという。熟成の価値を創出するのみにとどまらず、伝統産業としての酒造りを持続可能なものとする取り組みに尽力するのが[匠創生]だ。

今回安村さんとともに登壇した梅津さんは取り組みに対し、「酒蔵は造ることは得意でも、そのよさをどうやってお客さんに伝えるか、に関しては不得手。その部分をお手伝いしていただけるというのは、我々の一番足りないところを担ってもらえることになるので、とても期待しています」と感謝を述べていた。

梅津酒造有限会社会長の梅津雅典さん

苦手な人にこそ飲んでほしい、新感覚の熟成酒

「日本の古酒蔵」に集まる155の銘柄の中から、“若年層や女性に好まれる古酒”をコンセプトにブレンドさせた新商品が、『古昔の美酒 GOLD』と『古昔の美酒 梅響(うめひびき)』だ。

『GOLD』は石川県[福光屋]の1999年、山形県[朝日川酒造]の2000年、兵庫県[本田商店]の2010年をブレンドしたもの。「日本酒が苦手な人に飲んでほしい日本酒」だという。
日本酒好きのマーケットは縮小しており、酒そのものにも距離が置かれる傾向にある中で、あえてお酒を飲まなくなっている人たちを取り込みたいという戦略から誕生した。

「日本酒が苦手な人にその理由を聞くと、“口に含んだときのアルコールの刺激”を挙げる人が多く、ワインやカクテル、リキュールといったものに比べると甘みが伸びづらい、という声も聞きます。そこで、今回は155銘柄の中から[福光屋]の芳醇なバランスタイプ、[朝日川酒造]の酸味強めのタイプ、[本田商店]の甘み豊かなものを絶妙な比率でブレンドしました。いずれも金賞受賞酒で、それぞれの旨み・酸味・甘み・苦味が調和し、まろやかで飲みやすい新感覚の日本酒に仕上がっています」と安村さん。

『古昔の美酒 GOLD』

『梅響』は、「梅酒好きがうなる梅酒」がコンセプト。鳥取県[梅津酒造]の2006年、和歌山県[中野BC]の2007年という2種類の長期熟成梅酒をブレンドしている。どちらも焼酎ベースだ。
梅酒は海外でも非常に人気があるが、従来の甘くまろやかな梅酒とは一線を画した洗練された味わいを追究するために、ブレンド前に[梅津酒造]の梅酒を短期間バーボン樽で寝かせているそう。そのため、ブレンド後にはほんのりと甘みと苦味がプラスされている。
梅津さんは、試飲の感想として「おしゃれで洗練されたキレのよさがありながら、熟成による変化もよく出ている印象です。アルコール度数も20度あるので、ロックや炭酸、さまざまにアレンジできる可能性も持っていると思います。が、試飲していて、個人的には冷やす以上に常温が味わいの幅を楽しめそうだとも感じました」とコメント。

『古昔の美酒 梅響』

酒の味わいだけでなく、パッケージにもこだわりがうかがえる。
これまでは黒を基調としたラベルで展開していた商品を、今回からは若者や女性が手に取りやすいデザインに変更。『GOLD』は日本を代表する赤の弁柄色のラベル、『梅響』は伝統的な梅色のラベルをあしらい、お祝いや贈り物などにも最適な和モダンなデザインとなっている。販売は現在、公式オンラインショップのみの限定、とのことである。

古昔の美酒 GOLD 1999,2000,2010
内容量:日本酒 375ml/本
アルコール度数:17度以上18度未満
価格:9,900円(税込)
購入:https://oldvintage.jp/products/blend_gold

古昔の美酒 梅響 2006,2007
内容量:リキュール 350ml/本
アルコール度数:20度以上21度未満
価格:9,900円(税込)
購入:https://oldvintage.jp/products/umehibiki

自由な飲み方の提案で、幾重にも楽しめる1本に

試飲会では『GOLD』『梅響』両方がテイスティングできた。
『GOLD』は、カラメルの香りが豊かで、味わいはしっかりとした酸のアクセントが効いている。
アルコール度数が17度台と通常の日本酒に比べ度数が高めだが、熟成を経て分子がクラスター化することで、舌触りはなめらか。あえてその度数を生かし、ロックにしたり、炭酸を加えてハイボール風にしたりという提案もされていて、それぞれのアレンジでも試飲できたが、氷や炭酸を加えると、甘やかな中にふわりと乾いた藁や麦のような穀物のニュアンスが立ち、立体的な香りの層が見えてくる。1本で何通りものおいしさが味わえる。

『梅響』は、バーボン樽で寝かせたことによるスモーキーな香りやバニラの風味がかすかに感じられつつも、基軸にあるのは“梅らしさ”。しっかりとした梅の果実味が中心に陣取って、存在感を放つ。
芳醇でありながら、後口に心地よい苦味が現れて消えていく引き際も、洗練されている。比較のために一般的な梅酒も用意されていたが、飲み比べることによって、より香味の違いが際立つ。
また、試飲スペースにはラベルの配色の違う2種類の『梅響』が並んでいたが、[匠創生]の旗艦店「古酒の舎」店長でソムリエの松本大助さんによると「通常販売用と免税店用で配色を反転させているんです」とのことだ。

伝統に新たな価値を、革新で未来へ繋げる

今回発売された『GOLD』『梅響』以降も、年内に3種類ほどリリース予定があるそう。日本人だけではなく、世界中の若年層や女性に好まれるようなものを目指しているという。
「驚くような古酒に仕上げていきたいと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください」と安村さん。

「酒造り」という技術と職人の世界に“熟成”という、古いけれども現代には新しい価値を創出し続けていきたいという「古昔の美酒」。
ユネスコ無形文化遺産登録によって、注目されつつある日本酒業界が伝統と革新を融合し、酒造りの文化を未来へ繋げていくための一翼を担ってくれるに違いないはずだ。

ライター :髙橋亜理香
東京在住/日本酒・日本語ライター、日本語教師、日本酒テイスター
日本語と日本酒の「二本(日本)柱」で活動するライター兼教師。好きな銘柄は「やまとしずく」で、秋田県への愛が強め。
酒類以外の趣味は、ファッションと香水。保有資格:SAKE DIPLOMA・日本酒学講師・唎酒師・日本語教育能力検定試験

株式会社日本の古酒蔵

株式会社日本の古酒蔵

代表銘柄
INISHIE 匠
住所
兵庫県淡路市野島大川70
TEL
03-6832-7363
HP
https://oldvintage.jp/

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