日本酒の祖先、どぶろくをもっとカジュアルに 平和どぶろく兜町醸造所
2022年に東京・日本橋兜町にオープンした「平和どぶろく兜町醸造所」。
日本酒「紀土」で知られる平和酒造が開設したこちらの店では、できたてのどぶろくや日本酒、クラフトビールが楽しめます。
新感覚のどぶろくが開く、新たな酒文化の発信拠点となるか。
お店のコンセプトやどぶろくへの思いについて、平和酒造株式会社の代表取締役社長の山本 典正さんにお話を伺いました。
さまざまな可能性を秘めたどぶろく
――まず、どぶろくに着目された理由を教えてください。
山本 クラフトビールでいうところのブリュワリーパブ、その場で酒造りをしてお客様に提供するスタイルのように、日本酒でも気軽に醸造の瞬間と触れ合えるところができないかと考えた時、どぶろくならそれが可能ではないかと思ったのです。クラフトSAKEっぽい感覚です。また、どぶろくはさまざまな副原料が使えるというのがおもしろく、新たな米の酒の広がりが生まれるのではないかと。さらに日本酒よりも低アルコールに仕上げられる点もお客様に提供しやすいところです。
――米と米麹以外に、どのような副原料を使った種類がありますか?
山本 こちらではプレーン、小豆、黒豆、ホップ、白麹が定番で、他に週替わりで季節のどぶろくとして、今はブルーベリー、抹茶、十八穀米がありますね。発酵容器がすごく小さいんですよ。8Lくらいのサイズで一般的にナベと言われていますが、うちではタンクと呼んでいます。ここから掬ってグラスに注ぎます。
店舗で作られるどぶろく用のタンク。元気よく発酵中の醪はいい香り。
――まさにクラフト感がありますね!とてもいい香りがします。なるほど、酒蔵見学に行ったら醪がプクプクするのを見ることができるのと同じですね。
山本 そう、目の前で見ていただけます。これくらいの小さなサイズで造っているので、日替わりで提供できるのがこの場所のウリですね。大体2週間くらいで出来上がります。
――どぶろくというと昔ながらの造り方になるのですか?
山本 そうですね、うちの今の造り方というのは、ある程度現代的に、しかも酒蔵がやっていますので、日本酒の醸造技術とミックスした状態です。味わいも新しいというか、ちょっとヨーグルト感がある甘さと酸がバランスよく作られている感じです。お客様からも「意外とキレイだね」とか「スッキリしてますね」とか言われますね。
――バーフードのラインナップはいかがですか?
山本 どぶろくに合う、お酒がすすむものを揃えています。たまたま和歌山のものが多いというか、うちは和歌山の酒蔵なので。金山寺味噌や山椒、手作りの胡麻豆腐、和歌山のしらす、あと和歌山ラーメンもあります。
――どぶろくカレーというのもありますね。隠し味にどぶろくを使っているのですか?
山本 そうです。これは結構ユニークなつまみになりますね。お酒に合いますよ。
――他にもフルーツキムチや灰干しさんまなど、美味しそうなものがいっぱいですね。
どぶろく:(写真左から)ブルーベリー(季節限定)、プレーン(70ml 400円/120ml 650円)、黒豆(70ml 550円/120ml 950円)
バーフード:(写真左から)たっぷりの山利しらすと大根おろし400円、燻製ナッツ350円、金山寺味噌とクリームチーズとクラッカー 450円
どぶろく以外にも楽しんで
―― 代表銘柄「紀土」も飲めますか?
山本 もちろん、「紀土」も楽しんでいただける他、うちが手がけるクラフトビール「平和クラフト」も生サーバーで楽しんでいただけます。「紀土」やリキュール「鶴梅」と同じ高野山から流れる貴志川の伏流水を使用していてオススメです。そして、小売もしていますので、飲んで気に入ったお酒はその場で買って帰っていただけます。
―― 最後に平和酒造さんのトピックを教えてください。
山本 去年は精米所を持ちまして、自社での山田錦の栽培から精米して酒造りをするという一貫醸造ができるようになりました。うちとしても新たなステップに進めたかなと思っています。
大盛況だったイベント「SAKE PARK」
――今年初開催された「SAKE PARK」がとても盛り上がったそうですね!平和酒造さんが主になって実行委員会を立ち上げたとお聞きしました。
山本 全国26蔵に参加して頂いて、渋谷のMIYASHITA PARK芝生広場に約1万2000人が集まるという大きなイベントになりました。1970年代をピークに減産が続く日本酒業界の現状を変えるため、日本酒に触れる機会の少なかった若い世代、そして海外の方々への更なるアプローチができるイベントを開催したいという思いで呼びかけました。最先端の日本酒&クラフト・サケ※が集まったのと、街の中心地なので海外や若い女性のお客様も多く、とても賑わいました。なんといっても渋谷の中心。若者カルチャーの発信基地のような場所です。日本酒のこれからのためによかったのではないかと思います。屋外イベントなので、グルーヴ感があって楽しかったですね!有名レストランのシェフが提供するスペシャルフードも人気でしたし、クラウドファンディングも活用し、前夜祭・アフターパーティーへの参加権など特別感のある企画も用意しました。今後は年1回か2回の定期開催を予定しています。国籍、年代、性別も越えて、青空の下で楽しめるイベントの誕生です!
※クラフトサケ:日本酒の製造技術をベースにしながら、フルーツやハーブなどの副原料を加えることで、従来の日本酒にはない味わいを提案する新ジャンル
――これからもますますのご活躍を楽しみにしております。本日はありがとうございました。
平和どぶろく兜町醸造所
- 住所
- 東京都中央区日本橋兜町8番5号 1階 KITOKIGooglemapで開く
- TEL
- 03-6264-9457
- 営業時間
- 物販/13:00~22:00 飲食/13:00~22:30(フードLO22:00、ドリンクLO22:15)
- 定休日
- 無休
- 飲めるお酒
- 紀土、平和クラフト、平和どぶろく