歴史が育む地酒「四季桜」

栃木県宇都宮市の中心部からほど近い柳田地区に佇む［宇都宮酒造］。その歴史は明治4年（1871年）にさかのぼり、初代の今井翠吉氏が、栃木県河内郡平石村（現在の宇都宮市）に今井酒造店を創業したことに始まる。
代表銘柄は「四季桜（しきさくら）」。創業当初の銘柄は「四季の友」だったが、初代が詠んだ「月雪の友は他になし四季桜」という句にちなみ「四季桜」に改められたという。
栃木の地酒として特定名称酒から普通酒まで幅広い種類の日本酒を醸造するにとどまらず、四季折々の味わいを楽しめる季節限定酒として、特別純米生酒やにごり生酒なども手がけている。

鬼怒川の伏流水で醸す酒

創業以来150年以上にわたり、「まごころ一献。酒は造る者の姿勢が現れる」という深い信条のもと、伝統的な酒造りの技術を脈々と受け継ぎながら、時代に合わせて多様な日本酒を醸し続けてきた。
仕込み水は、市の南東部を流れる鬼怒川の伏流水を使い、原料米は、地元の柳田酒米研究会が丹精込めて栽培する酒造好適米「五百万石」や「美山錦」のほか、県内で栽培された「あさひの夢」「夢ささら」などを積極的に使用。こだわり抜いた原料が、香り豊かで口当たりがやさしく、キレのよさとほのかな甘みがある「四季桜」の味わいの要となっている。

栃木の地酒が世界へ羽ばたく

［宇都宮酒造］は、近年、国内のみならず海外のコンクールで数々の輝かしい成果を収めている。2024年にオーストラリアのシドニーで開催された「Australian Sake Awards」では、「四季桜 万葉聖（大吟醸酒）」がプラチナ賞、「四季桜 とちぎの星純米酒」がゴールド賞に輝いた。
さらに、同コンクールのフードマッチング審査においても、「四季桜 とちぎの星純米酒」は、オーストラリアの代表的な食材であるオージービーフとのペアリングで、最高賞「Best Food Matching賞」を受賞している。

「女性が手がけた女性のための純米吟醸酒」として企画された「四季桜 純米吟醸 ARUSHIROI」は、フランスの日本酒コンクール「Kura Master」2022年度の純米酒部門で、プラチナ賞を獲得した。栃木県内の「momo farm」で初めて栽培された、酒造好適米「五百万石」を用い、女性たちの手によって商品企画から醸造まで一貫して行われた酒だ。辛口の原酒で、うま味のあるほどよい酸味は、女性に限らず幅広い愛飲家に好まれているという。
地酒「四季桜」を醸す［宇都宮酒造］は、栃木の地から世界へ向けて着実にその名を広げている。これからも、地域に根ざしながら世界を見据えた旨い酒造りを続け、日本酒文化の新たな地平を切り開いていく。