米の旨みが引き出される燗酒の魅力

日本酒は温度帯による味の変化を楽しむ世界的にも珍しいお酒。
呼び方も人肌燗やぬる燗、熱燗、飛び切り燗まであるのが、感性豊かな日本人らしい。

一般的に燗をつけると、米の旨みが引き出されたり、味わいが深くなる傾向にある。また、飲めば体が温まるのも燗酒の魅力だ。

［さかぶくろ］の燗酒はお燗瓶を再現したオリジナルとっくりで提供される。
「お燗瓶」とは昭和頃に多く見られたそのまま燗が付けられる一合入りの酒瓶のこと。そんなこだわりからも燗酒への愛情が感じられる。

“吟醸酒などの良い酒は燗にしたらもったいない”と言われたのは昔のはなし。「ぜひ、先入観を持たずに楽しんでください」と店主の松井さん。

蔵元の顔を見て、揃えた日本酒の数々

2023年で13周年を迎える京都・西院の居酒屋。
地下への階段を降り、扉を開けると奥へ続く長いカウンターが目に留まる。聞けば酒を搾る槽（おけ）の板を再利用しているとか。

ズラリと揃った日本酒は、松井さんが蔵元の顔を見て仕入れたものが多く信頼がおける。

［さかぶくろ］では燗酒が一年中楽しめ、すべてのお酒を燗にできる。

日本酒のメニュー表には「スッキリ」「コクと旨味」などジャンル分けがされており、「燗」の項目は特に充実している。

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店主　松井敬太さん

プロフィール

兵庫県出身。実家の酒販店で日本酒の知識を深め、酒蔵との交流も多い。［さかぶくろ］の開業に伴いホールを担当。現在は厨房を預かる。

店主が推す！燗で飲んでほしい日本酒5選

燗酒の注文が増え始めるのはやはり寒さを感じる頃からだとか。

「燗酒が苦手という方は、意外と多いんです。自信を持っておすすめしているお酒ばかりなので、とりあえず飲んでみてください」と松井さん。

■久米桜　生酛純米　八郷、1合900円
久米桜酒造（鳥取県）、アルコール度数14度、精米歩合60%

鳥取県八郷産の山田錦100%使用。酒造年度R4BY。
地元八郷産の山田錦を使用した季節限定酒は、毎年イラストラベルのシリーズに。2022年は恐竜ラベルで今年はお相撲さん。

松井さん「火入れ加水がしてあってアルコール度数は14度と低め。口当たりがやさしく、清らかさと透明感があります。燗にしても清々しさは残ったままです。」

■京の春　純米生酛、1合1500円
向井酒造（京都府）、アルコール度数15度、精米歩合65%

京都の酒造好適米「祝」100%使用。酒造年度26BY。
昔ながらの生酛造りの純米酒で、米の旨みをしっかり感じられる。向井酒造は舟屋で有名な伊根湾に面した酒蔵。

松井さん「店で8年寝かせておいた自家貯蔵酒。常温熟成なのにびっくりするほど枯れず、いい味に仕上がりました。出始めよりも味わいはまるく、クリアになっています」

■諏訪泉　純米吟醸ひやおろし　杉の雫きのこラベル、1合1000円
諏訪酒蔵（鳥取県）、アルコール度数15度、精米歩合55%

地元の鳥取県智頭町産玉栄100%。低温でひと夏寝かせたひやおろし。多種多様なきのこのブーケを描いた個性的なラベルは、カエル工房の溝 潤子さんのイラスト。

松井さん「軽く熟成感のある、落ち着いた味わいのひやおろし。口当たりがふっくらやわらかで、万人受けする味わいだと思います。バランスの良さも魅力」

■舞美人　山廃純米、1合1200円
美川酒蔵場（福井県）、アルコール度数15度以上16度未満、精米歩合60%

福井産五百万石100%使用。酵母を添加せず、蔵付き酵母で長時間かけて発酵させ、昔ながらの木槽で搾ったお酒。香りと旨みと酸味のバランスが絶妙。

松井さん「生酒中心の酒蔵ですが、これは火入れで酒造年度25BYの熟成酒です。酸っぱさが特徴で、ナチュラルワインが好きな方は気に入ってもらえそう」

■大正の鶴　二夏越え　純米無濾過原酒、1合1000円
落酒造場（岡山県）、アルコール度数17度、精米歩合65%

岡山県赤磐市産の朝日米100%使用。
搾って無濾過のまま1回火入れし、二夏かけて蔵内の冷暗所で熟成させた限定酒。

松井さん「蔵の仕込み水は中硬水でミネラル感のあるお酒が多い。この大正の鶴は風味豊かでクリアな味わいです。燗にすると米の香りが引き立ち、原酒なのに重く感じません」

一見シンプルだけど、手が掛かっている酒肴

料理も天然魚のお造り、炭火焼きを中心に一捻りした酒肴が多く、バラエティ豊かに楽しめる。

魚介のおいしさには定評があり、天然魚のお造りのほか自家製の干物も人気。
定番メニューも手が掛かっており、ちくわの磯辺揚げは贅沢な白ちくわ、ハムカツは自家製のロースハムを用いた逸品。

お造り五種盛り合わせ　1人前1000円
魚はすべて天然物にこだわり、毎朝市場へ通って良いものを厳選する。この日は真ハタ、紋甲イカ、鯵、迷い鰹、カマスは皮を軽く炙ってあり香ばしい

白ちくわ磯辺揚げ　550円
白身魚のすり身だけを使用したほんのり甘く柔らかい白ちくわは、宮津から直送。衣に香りの良い生海苔を使った、ひと味もふた味も違う贅沢な磯部揚げ

豚ロース醤油麹漬け　1000円
京都府のブランド豚、京都ぽーくのロース肉を醤油麹に漬け込み、炭火焼にした人気の一品。中まで味が染みて肉はやわらか。もちろん日本酒との相性は抜群だ

年末年始も燗酒を思う存分、堪能して！

奥には座敷があり、忘年会・新年会の予約も受付中。1人4980円からのコースは純米酒の飲み放題付きというから、西院近辺ならずとも気になる向きは多そうだ。

ぜひ、おすすめの燗酒をぞんぶんに堪能してほしい。

Instagram /＠sakabukuro

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