【豆知識】 11月11日は「立ち飲みの日」! 立ち飲みの始まりや楽しみ方について教えます。
11月11日といえば「ポッキーの日」など、1年のうちでもたくさんの記念日が集まる日。お酒関連でも「立ち飲みの日」に制定されています。本稿では立ち飲みの歴史や、日本酒の立ち飲みについて唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
立ち飲みの日が11月11日になった理由は、数字の1の並びを人々が立っている様子に例えて。2010年に制定され、翌年の2011年には「111111」と1が6つ並び、100年に一度と話題になりました。
最近ではこだわりの日本酒が手頃な価格で楽しめる立ち飲み店も増えています。
江戸時代から庶民の楽しみだった立ち飲み
立ち飲みは江戸時代に始まったといわれています。当時の庶民の間では、お寿司や蕎麦の立ち食い屋台が流行り、同じように酒屋の店先でもちょっとしたアテをつまみながら、お酒を楽しんでいたのでしょう。
江戸期から今も営業を続けている酒屋の[小倉屋]には、忠臣蔵の赤穂浪士四十七士のひとりとして有名な武士・堀部安兵衛が、高田馬場の決闘に向かう途中に枡酒をあおった際に使用した五合枡が家宝として伝わっているそうです。
酒販店内で提供されたお酒を飲む「角打ち」も、立ち飲みスタイルのひとつ。こちらは、明治時代の後半頃に製鉄業が盛んだった北九州において、夜勤明けの人たちが朝から開いている酒屋に立ち寄り、一杯飲んで疲れを癒したのが発祥とされています。
最近では、スタンディングの居酒屋も含めた立ち飲み店全般を「角打ち」と呼んだりもしますね。
日本酒専門の立ち飲み店が増えている
最近では日本酒にこだわった立ち飲み店も増えています。
人気の居酒屋が「日本酒に親しんでもらいたい!」と立ち飲み店を設けたり、なかには酒販店内に小さなカウンターを置き、試飲を兼ねて提供するパターンもあります。
店内には日本酒に詳しいスタッフがいて、数十種類の銘柄を立ち飲みならではのお手頃価格で楽しめるのがうれしい点。簡単に作れておいしい酒肴も多く、家飲みの参考にしたくなります。
立ち飲みといっても、かつてのような“おじさん御用達”のイメージとは様変わりして、若い層や女性客が一人で入れるスタイリッシュな雰囲気のお店が多いのも最近の傾向です。
店ではマナーを守って気持ちよく
気軽に寄れて、財布にやさしい立ち飲み店。隣のお客さんとの距離も近く、思わぬ交流が生まれるのも魅力です。
それだけにみんなが気持ちよく過ごせるよう、ちょっとしたマナーに気をつけたいもの。店内が混んできたらスペースを譲り合い、長居をしないで切り上げる、大声を出して騒がない、なにより飲み過ぎには要注意。「立って飲むと酔いにくい」という人もありますが、それは気のせいです。
サクッと飲んできれいに去る、そんな粋なお客でありたいものですね。
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。