【豆知識】8月24日(土)は「愛酒の日」!お酒を愛した歌人・若山牧水の歌のかずかず
大の日本酒好きとして知られる歌人・若山牧水の誕生日にちなんで制定された「愛酒の日」。多くのお酒にまつわる歌を残した若山牧水について、唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
歌人・若山牧水の誕生日にちなんだ日
ご存知でしたか、8月24日は「愛酒の日」です。明治生まれの歌人・若山牧水の誕生日にちなんで制定されました。牧水は大変な酒豪として知られ、毎日一升ものお酒を飲んだというのは有名です。生涯で詠んだ短歌は約9000首、そのうち300首あまりがお酒にまつわる歌といいます。
こよなく酒を愛した若山牧水
「酒仙の歌人」と呼ばれた若山牧水。残した数々の歌にはお酒を愛し、時に悩む姿が刻まれています。
幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく 『別離』
牧水は日本各地を旅して歌を詠みました。あちこちにある歌碑がその足跡を記しています。旅先では有名な歌人であることを名乗らず、土地の人とお酒を飲むのが好きだったそう。ご当地の美味しい地酒を楽しみにしていたのかもしれませんね。
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり 『路上』
あまたある酒の歌のなかでも、最も知られているのがこの歌。牧水は友人と語らいながらのお酒を好みましたが、自らと対話をするように一人で静かに盃を傾ける時間を最も愛しました。
それほどにうまきかと人のとひたらばなんと答へむこの酒の味 『白梅集』
朝2合、昼2合、夜4合、合わせて一日一升のお酒を飲んでいた牧水。人にはなんと答えようか、お酒の味は味覚だけではない。ある随筆では“酒は心で噛み締める味わいを持っている”と述べ、また“心の栄養であり、心を潤し、弱った心を蘇らせる”としています。牧水にとってお酒は寂しい心をなぐさめ、創作に力を与えてくれる存在でした。
朝酒はやめむ昼ざけせんもなしゆふがたばかり少し飲ましめ 『くろ土』
飲み過ぎがたたり、いよいよ医者にお酒を控えるようにいわれた牧水。それでも好きなものはやめられず、未練たらたらの様子になんだか親近感が湧いてしまいます。
やはりお酒はほどほどに
酒を愛し酒に愛された若山牧水ですが、さすがに暴飲がたたって肝硬変を患い、43歳でこの世を去ります。亡くなったのは9月でまだ残暑が厳しいのにもかかわらず、ほとんど腐臭がしなかったため、「生きたままアルコール漬けになったのでは」と医者に言われたというエピソードが残されています。
牧水にとって友人と飲む酒は人生の楽しみであり、心の支えであり、創作の原動力でありました。それでもやはり、お酒はほどほどが良いようですね。
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。