世界唎酒師コンクール優秀賞・藤川智子さんもおすすめ
「My Sake World」のブレンドで広がる日本酒の学び
日本酒は、2000年以上にも遡る国の誕生とともに歩み、長い歴史の中で多くの人々に嗜好品として親しまれてきた。藤川智子さんは、そんな日本酒について「お酒は勉強する時代。ただ飲むだけではもったいないお酒であふれている」というスローガンのもと、その奥深い魅力を数多くの生徒に伝え続けている。
2025年に第6回目を迎えた「世界唎酒師コンクール」には、国内外から数多くの参加者が集結。その中で藤川智子さんは、「小売サービス部門優秀賞(優勝)」「SAKE HUNDRED審査員特別賞」という史上初の2冠を達成。世界中に約6万人いる唎酒師の頂点に立った瞬間だった。
近年、日本酒は国内にとどまらず、世界的にも注目を集める存在となっている。それを象徴するように、本コンクールでも台湾、アメリカからの参加者が入賞する中、藤川さんは日本人唯一の受賞者としてその実力を示した。
現在は関西を拠点に、日本酒・焼酎・どぶろくなど幅広い酒類の講師として活動し、その魅力を幅広い世代に伝え続ける藤川さん。本記事では「世界唎酒師コンクール」を振り返るとともに、彼女が歩んできた軌跡とこれから描く未来、そして「My Sake World」での学びについて迫る。
この方に話を聞きました

- TASTING ROOM Fオーナー講師 藤川智子さん
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プロフィール大型ホテル勤務後、ワイン輸入商社でソムリエ資格を取得。ワインバイヤーとして国内外を飛び回る中、日本酒・焼酎の奥深さに触れ造詣を深める。2025年に実施された第6回唎酒師コンクールでは「小売サービス部門優秀賞」「SAKE HUNDRED審査員特別賞」を受賞。現在は大阪府東大阪市にて本格的にお酒のテイスティングを学べる教室「TASTING ROOM F」を運営する。
ワイン商社勤務から日本酒学講師へ
―日本酒に関わるまでの経緯を教えてください。
藤川さん(以下略)「短大で英語を専攻していましたので、英語を使う仕事として大手ホテルに就職しました。その後は国家公務員試験を受けて郵便局に転職。海外に行きたいという気持ちが強くなり、郵便局を辞めて数年間は海外旅行に行ったり来たりを繰り返していたんです。
30歳前後で落ち着こうと思い、モトックスというワインの商社に就職しました。語学力も活かせますし、お酒も飲める体質だったのですごく楽しく働いていました。この時にワインのソムリエ資格を取得したんです」

―お酒の関わりはワインからだったのですね。
「その後はインポーターという立場から、百貨店での販売や北新地のバーでソムリエをするなど、どんどん現場での経験を積んでいきました。そうした中で、海外のワインメーカーの方に『日本酒ってすごいよね。教えてよ』って言われたんです。
当時、わたしは山田錦がどこで栽培されているのかも知らないレベルだったので、『やばい』と思ったのを覚えていますね。
またある日、百貨店で日本酒を選んでいるシンガポールの方を接客する機会がありました。担当の唎酒師を呼び、英語で通訳しただけなのですが、『地元の日本酒が買いたいけれど、言葉が通じずにこれまで金賞などを目安に買っていた。今日の買い物体験はこれまでで一番だった』と言われたんです。
ここで日本酒に対する勉強スイッチが入り、百貨店の日本酒を片っ端から購入して飲んでいったんです。燗酒を飲んでいたら冬に風邪をひかなかったりと、身体に合っていると思いはまっていきましたね」
―ワインから日本酒に移って感じたことは?
「初めはグレーで明確にならない部分が多いと思いました。ワインのように産地との結びつきがあるようでない。唎酒師資格の勉強で理解できたことも多いのですが、まだまだ分からないことだらけでした。
ワインスクールのように気軽に日本酒を学べる場所が関西にはなかったので、勉強するためには資格試験を受験するしかなかったんです。その結果、現在は15種類くらいの資格を保有しています」

―そこから講師への道へ?
「お客様やソムリエ仲間に学んだ日本酒の知識を伝えていると、皆さんすごく喜んでくれたんです。次第に講座を開くようになるのですが、こうしたサービスはこれまでなかったんだとそこで気が付きました。
酒のプロとしてやっていくなら、まずは日本酒を一番に語れるようになること。地元の大阪産のワインも同様に。そしてこれを日本人としての自分のアイデンティティにしようと決めたのが、現在の講師業につながっています。
講座の座右の銘は『お酒は勉強する時代。ただ飲むだけではもったいないお酒に溢れている』なんです。飲み手が少しの知識を持つだけで、お酒という液体を通して酒蔵とコミュニケーションが取れるようになるんですよ。
日本酒は情熱をかけて造られています。一口のお酒から大きな感動をもらえますし、そのことを酒蔵にも伝える。こうした橋渡しになりたいと思っています」
「教育」で日本酒サービスマンの評価を向上
―そうした活動の中、2025年に開催された「世界唎酒師コンクール」で素晴らしい結果を残されました。
「このコンクールは『小売サービス部門』と『料飲サービス部門』の2部門に分かれています。私は『小売サービス部門優秀賞』、『料飲サービス部門』はアメリカ代表が受賞しました。総合優勝は台湾代表が獲得したんですよ。
日本酒の世界でこうしたコンクールがあることはまだまだ認知されていないので、わたしの活動を通じて宣伝することを新たな使命に感じています」

▲コンクールで受賞した時の様子
―出場の経緯は?
「よく周囲から『ワインも日本酒も英語もできてすごいね!』と言っていただけるんですが、自分自身では何がすごいのかさっぱり分かりませんでした。そこで、わたしを知らない人たちや審査員達に評価されたとしたら、自分でも認められるかなと思いコンクールに自身を投入したんです」
―しっかり結果を残されているのはさすがです。振り返ってみていかがでしょうか?
「このコンクールでは8カ月にわたり審査が行われます。最初のブラインドテイスティング審査で半数が脱落し、次はロールプレイ、ペアリング、オリジナルカクテル提案といった内容が続くんです。エントリーしてから決勝戦までは本当に長い道のり。期間中、ずっと気を抜けない日々を過ごしました。
セミファイナルは全員が東京に集まりロールプレイを行い、決勝戦の朝に出場者が決まるんです。前日の夜は寝ながら焼酎の4分類などを思い浮かべ、緊張しつつも仕上げていきましたね。
海外勢の熱量も高いですが、次回のファイナリストは全員関西から出したいと思っています(笑)関西は世界一の酒所ですので、現地のサービスマンがけん引していければいいですよね」

▲コンクール最終日、ファイナリストとしてロールプレイを行う藤川さん
―日本酒サービスのさらなる発展が期待されます。
「酒類業界には製造業、流通販売/飲食業があり、そして消費者がいます。この3つに加えて『教育』の分野があるんです。ワインの世界であれば、WSET(※1)が全体の底上げをしています。
日本酒サービスマンの評価をもっと上げるためには、やはり教育が必要なんです。『こんな人になりたいな』『華やかで楽しそうだな』『お酒のサービスをやりたいな』と思ってもらえるプロ達を伸ばす教育者でありたいですね」
※1:Wine & Spirit Education Trustの略称。ロンドンに本部をおく国際的な酒類教育機関。
お酒の観光業として楽しい「My Sake World」
―本日はMy Sake Worldでのブレンド体験もされましたが、いかがでしたか?
「それぞれの銘柄、味わいの違いを分かりやすく説明していただき楽しく体験できました。
今回の1つ目は松井酒造さんの『神蔵』を中心にしつつ、香りを出した飲みやすいものを造りました。2つ目には藤井酒造の『龍勢』と『にいだしぜんしゅ』に玉乃光の『TAMA』を入れた、少し個性的なものに仕上げました」

―日本酒をブレンドすることで好みの香味を生み出す経験は貴重です。
「以前、生徒さんに『My Sake World』のお話をしていたら、『行きたい!』と興味を持ってくださったんです。その方は酒造メーカーで製品管理をされているのですが(笑)
実はわたしは、酒匠試験の受験対策を教えていた台湾人の生徒さんが合格祝いに来たいということでお連れして、過去に一度体験したことがあるんです。今回は2度目の挑戦ということもあり、より上手く仕上げられたと感じます。
河原町店は大人数に対応できるようですので、次回はもっとたくさんの生徒さんをお連れしたいですね」
―ワインでのブレンド経験は?
「ワインのバイヤー時代、イタリアでPB商品の開発でブレンドを担当したことがありました。タンクごとに異なる香味のワインをブレンドして一つの商品を完成させるのですが、その当時の思い出が蘇ってきました(笑)」
―日本酒のブレンドについて感じたことは?
「どのお酒も球体のように完成されているイメージがあります。でこぼこが無いと組み合わないのですが、球体同士をうまくリンクさせていくイメージで面白いです。今回の2種類については、エレガントにまとめることができたと感じています。
ブレンドするからこそ、一つ一つの銘柄をしっかり味わえる点がすごく教育に向いています。酸味などの五味を捉えられるので勉強になりますね」

―My Sake Worldに期待することは?
「お酒の観光業として楽しい施設だと思います。少しずつ色々な日本酒を確認でき、味わいに集中できることはとても素晴らしい。
今回造った2種類は今度、生徒さんへブラインドで提供してみようと思います(笑)『上手くブレンドできたよ』ということと、『みんなで行こうよ』とお伝えしたいですね。今後も多くのお客様を楽しませ続けてください」
お酒を通じて広がる出会いの輪
―今後の展望について教えてください。
「これまで日本人に限定して講座を開いてきましたが、これからは海外の方々にも日本で気軽にSAKE資格を取得できる講座を開催して、日本酒を選択するプライオリティを上げてもらえるよう、教育者の立場からその魅力を発信していこうと思います。
その第一弾として2026年2月に英語での『日本酒ナビゲーター認定講座』をスタートする予定です。
お酒の業界に入ってから楽しいことがたくさんありました。一度お酒を通して出会った人たちとはずっと友達になります。とっても豊かな時間を過ごせていると思いますので、こういった楽しい場を広げていきたいですね」

「お酒を勉強しようと思うことは、神様から与えられた能力だと思います。同じ価値観を持った人との出会いは貴重ですし、みんなすっごく仲良くなります」と話す藤川さん。
お酒の教育を通して人材を育て、業界全体の活性化、そして日本酒の未来を切り拓いていく。その活動の根底には、日本人として国の宝である日本酒文化を継承すること、造り手の情熱を伝えたいという想い、そして何よりも「楽しい」を分かち合いたいという純粋な気持ちがある。
世界唎酒師コンクールでの入賞を一つの節目として、これからより多くの人々に日本酒の奥深さと喜びを届けていくだろう。今後のさらなる活躍に注目したい。
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ライター:新井勇貴
酒の文化と物語を伝えるフリーライター。大学卒業後に京都市内の酒屋へ就職し、食品メーカーでの営業を経て独立。(Webサイト)
保有資格:J.S.A. SAKE DIPLOMA・ワインエキスパート/SSI 酒匠・日本酒学講師




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