群馬泉 淡緑
島岡酒造 | 群馬県
島岡酒造
酒蔵に棲む微生物と手を取り合った酒造り。群馬県の[島岡酒造]が創業時から継承し続ける「生もと系山廃造り」は、進化はしても変化はしない。
文久3年(1863年)、群馬県太田市に創業した[島岡酒造]は、赤城山系の伏流水という恵まれた湧水と地元産の米を使用し、地域の豊かな自然を生かした酒造りを続けてきた。伝統の「生もと系山廃造り」で、手間ひまかけてじっくりと丁寧に醸される酒は、その名も「群馬泉」。濃醇なうまみにあふれ、生命力を感じさせながらも、複雑なまろみを持つ酒だ。心地よく体に沁み入るその味わいは、毎日でも飲み飽きさせず、飲む人をほっとさせてくれる。
自然の力を最大限に生かす「生もと系山廃造り」を創業時から継承してきた、全国でも数少ない酒蔵である[島岡酒造]の酒造りは、「変わらない」ことを大切にしてきた。と言っても、それは決して「全く同じものを造り続ける」ということではない。時代とともに酒は洗練されていくものであり、その時代を超えてさらに「飲み続けられるもの」でなくてはならない。いつまでも変わらずに「飲み継がれていく」ために、必要な進化を続けるのが「進化はしても、変化はしない」という蔵のポリシーである。
「生もと系山廃造り」とは、日本の冬の気候、微生物、そしてそれらの力を発揮させるための蔵人の技術のどれが欠けても成立しない、繊細な製法だ。[島岡酒造]では、長年酒蔵に棲みついている天然の乳酸菌や、麹といった微生物の力を借りて、古くから続く酒造りを守っている。山廃造りは、人工的に手を入れる工程が少なく、その分造り手の技と経験が必須。変化を見逃さない杜氏の観察眼に支えられている。そんな製法をバックアップするのは、地元産の「若水」や「舞風」といった酒米に、生もと系に最適な硬度の高い水。また出来上がった酒は、新酒を除いて1~2年の熟成ののちに出荷させるため、山廃らしい力強さに加え、時を経たまろやかさと複雑味が与えられる。
骨太で複雑な「群馬泉」は、昨今のトレンドのような酒や出品酒などの華やかなタイプとはまったく異なる個性を持つ酒だが、近年は酒にも多様性が求められてきたことで、コンクールのような対外的な場面での評価も高まってきている。海外のように、熟成に価値を見いだす流れも日本に生まれてきた今、伝統の「群馬泉」は、日本酒の新たな未来を担う一本たり得ることとなるはずだ。