【今さら聞けない教えて!?シリーズ23】順番~荒走り・中汲み・責め~
酒袋に詰められ搾られた醪は、袋から出てくる順番によって、それぞれ別の呼び方をします。今回は~荒走り・中汲み・責め~の呼び方についてお話します。
醪を搾ってお酒と酒粕に分ける上槽という作業があることは、このシリーズの14話『上槽 ~槽搾りについて』、15話『上槽 ~袋吊りと自動圧搾機について』でお話した通りです。醪は、いくつかのプロセス経て、段階的にお酒になります。今回は、お酒になった順番によって変わる呼び方のお話です。
前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ22】硝子瓶~洗瓶、瓶詰め、そして打栓~
この方が解説します

- 杜氏屋主人・プロデューサー中野恵利さん
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プロフィール1995年、大阪・天神橋筋に日本酒バー「Janapese Refined Sake Bar 杜氏屋」を開店。日本酒評論家、セミナー講師、作詞家としてさまざまな分野で活躍。
● 荒走り
槽、自動圧搾機、いずれにおいても、搾り始めは圧力をかけず、醪に自らの重みで酒袋や濾布の目から液体を押し出させます。こうして最初に流れ出たお酒を “ 荒走り ” と言います。ビールで言うところの一番搾り麦汁です。
鮮度において申し分なく、醪のポテンシャルを強く感じ取れる、最も自然体のお酒です。
荒走りとは、力強くプリミティブな状態を “ 荒 ” で、堰を切ったように流れ出る様子を “ 走る ” で表現したものと思われます。
同じ音を持つ “ 新走り ” という言葉は晩秋の季語として使われ、新しく造られたお酒という意味で、俳句や手紙の時候の挨拶に使われます。
● 中汲み(中取り・中垂れ)
荒走りの次は “ 中汲み ” です。“ 中取り ” “ 中垂れ ” とも言う、圧力を操りながら搾る部分のことで、一度の上槽で搾られるお酒は、この部分が多く割合を占めます。
香味のバランスが優れた部分とされ、この部分のみを鑑評会への出品酒にする酒蔵が多く見られます。
搾りの工程でも、時間の経過とともに変化が伴います。ワイルドさが鳴りを潜め、せめぎ合うように存在していた微生物たちが順応を見せ始め、醪が秘めていた潜在能力をはっきりと示すのが、この段階で生まれてきたお酒のように思います。
どの呼び方にも “ 中 ” という文字が見て取られるのは、醪の中間部分にあたること、タンクの中央部分にあたることから。
次に続く言葉は、この工程をどの視点から見たかで違ってきます。作業をする立場で表すと “ 取る ” “ 汲む ” 。滴り落ちる液体を客観的に見た場合には、” 垂れ落ちる “ となるわけです。
● 責め
最後に、強く圧力をかけて搾りきります。圧力をかける = 責め としています。
ギュウッと圧力をかけて搾りきるため多重な味わいが感じられ、日本酒を構成する有機酸が味蕾に押し寄せるような感覚が得られます。
醪に含まれる液体量が少なくなった搾りの終盤、責め立てるように強い圧力をかけて搾り出すお酒は、雑味が多い、苦味を感じると、ネガティブな表現をされることもありますが、甘・辛・酸・渋・苦、五味それぞれがせめぎ合うような “ 責め ” は、単体で楽しめることはもちろん、食中酒としての面白みもあるお酒です。ひところでは、苦味は評価を下げる要因の一つでしたが、今は苦味もお酒を構成する大切な要素と捉えるようになりました。
● どこからどこまで?
それぞれ量が決められているわけではないので、杜氏の裁量で、ここまでが荒走り、ここから中汲み(中取り・中垂れ)、このあとは責めと決めます。
● どれが好き? どれも好き!
順を追って生まれてくるお酒には、それぞれの良さがあります。どれが好きって聞かれたら…… どれも好きって答えます!
また、段階的に搾られたお酒をブレンドして出荷するものもあります。
前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ22】硝子瓶~洗瓶、瓶詰め、そして打栓~


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