Sake Trivia

【豆知識】醸造アルコールはワルモノではない!?「日本酒のアルコール添加」

醸造アルコールの添加については、いろいろと意見が分かれるところ。もちろん純米酒もいいですが、本醸造酒には本醸造酒の良さがあります。今回は添加の理由やその利点について唎酒師の藤田えり子さんが解説します。

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醸造アルコールの添加については、いろいろと意見が分かれるところ。もちろん純米酒もいいですが、本醸造酒には本醸造酒の良さがあります。今回は添加の理由やその利点について唎酒師の藤田えり子さんが解説します。

醸造アルコールってなんだろう?

純米酒の人気が高まり、本醸造などの醸造アルコールを添加したお酒、いわゆるアル添酒がワルモノ扱いされがちな今日このごろ。でも、ちょっと待ってください! 醸造アルコールの添加にはいくつもの利点があり、造り手の腕の見せどころでもあるんです。

まずは醸造アルコールの実体について知っておきましょう。サトウキビなどから砂糖を精製するときにできる副産物「廃糖蜜」を原料に蒸留したものが醸造アルコールで、それ自体には味や香りはほとんどありません。また、廃糖蜜からは甲類焼酎やラム酒も作られ、アルコールのほかにもさまざまな食品の原料として用いられています。

醸造アルコール添加のメリット

純米の表記がない日本酒は醸造アルコールを使用しています。具体的には大吟醸酒、吟醸酒、本醸造酒が挙げられ、添加にはそれぞれの目的があります。添加量は白米重量の10%以下という制限がありますが、実際はかなり少量に留めてあることがほとんど。(なお、10%以上添加したものは普通酒というカテゴリーになります)

●吟醸香を引き出す
大吟醸酒や吟醸酒に使用する場合は、アルコールの溶解作用によって吟醸香を開かせる効果があります。

●味わいをスッキリさせる
醸造アルコールのクリアさを生かして、スッキリとキレのある味わいに仕上げることができます。

●保存性を高める
お酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落ち菌)の増殖を防ぐ効果があります。

●価格をリーズナブルにできる
原料米の使用量が減らせるので、手頃な価格で提供できます。本醸造酒では値段とのバランスを考えながら、いかに毎日飲んでも飽きない味に仕上げるか、造り手の技術が発揮されるところです。

でも、かつてはこんな黒歴史が…

もとは江戸時代に生まれた柱焼酎仕込みという、酒粕を蒸留して作った焼酎をもろみに加えて風味を良くした伝統技術がルーツになっています。

それでもアル添酒が邪道と誤解される理由は、ひとつには歴史的事情があるかもしれません。昭和17年に醸造アルコール添加の技法が認可されましたが、その当時は第二次世界大戦中の米不足を補う増量が目的でした。さらに糖類や酸味料、グルタミン酸ソーダを混ぜ三倍に量を増やした「三増酒」といわれるお酒が戦後に普及したため、いまだにまずい酒のイメージが拭えないのかもしれません。そろそろ、そんなイメージからは脱却しませんか。

食事に合う本醸造酒を毎日の晩酌で

アル添酒の中でも、特に本醸造酒は淡麗でどんな料理にも相性がよく、ぬる燗にするとより味わいがふくらみます。なにより値段が手頃だから、日常的に楽しめるお酒です。本醸造酒にこだわる酒蔵もたくさんあります。ぜひ“我が晩酌の定番“を見つけてくださいね。


ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。

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